今回は、2026年7月12日に開催されたエッセンシャル股関節セミナーに参加し、股関節の機能解剖から鑑別・スクリーニング、評価方法、治療アプローチ、そしてセルフケアや運動療法まで、股関節治療について学びました。
今回のセミナーで特に重要だと感じたのは、「股関節が痛いから股関節だけを治療する」という考え方では十分ではないという点です。
股関節の痛みにはさまざまな原因があります
一言で「股関節痛」といっても、その原因は一つではありません。
股関節周囲の筋肉や関節の動きが悪くなっているケースもあれば、変形性股関節症、大腿骨寛骨臼インピンジメント)など、構造的な問題が関係しているケースもあります。
セミナーでは、FAI、恥骨枝の疲労骨折、大腿骨頭壊死、ペルテス病、進行した変形性股関節症など、治療を開始する前に注意すべき疾患やサインについても詳しく学びました。
そのため大切なのは、最初から「筋肉が硬いからほぐす」と決めつけるのではなく、患者様の症状、既往歴、痛みの出方、関節可動域などを確認し、まず何が起きている可能性があるのかを考えることです。
必要に応じて病院での検査やMRIなどの画像診断につなげる判断も、治療技術と同じくらい重要です。
股関節だけではなく、腰・骨盤・体幹まで評価します。
今回のセミナーでもう一つ印象的だったのが、股関節を単独の関節として考えないことです。
股関節の動きには、骨盤や腰椎だけではなく、体幹の安定性、呼吸、胸郭の動き、臀部の筋肉など、さまざまな要素が関係します。
例えば、横隔膜や腹横筋など体幹を安定させる機能が低下すると、その代わりに腸腰筋や脊柱起立筋などが過剰に働くことがあります。
また、大臀筋や中臀筋の機能が低下すると、腸腰筋や股関節外旋筋群などが代償的に働き、結果として股関節への負担が増えていくという考え方についても学びました。
つまり、
「痛い場所=原因となっている場所」とは限りません。
股関節に痛みが出ていたとしても、その背景に体幹の安定性低下や骨盤のコントロール、臀部の筋力低下、呼吸や胸郭の動きなどが関係している可能性があります。
そのため、股関節だけを繰り返し治療するのではなく、身体全体を評価して「なぜ股関節に負担が集中しているのか」を探していくことが重要になります。
病院やクリニックに行って股関節だけをマッサージや電気マッサージされて終わりにされた経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
筋肉の硬さと関節自体の硬さを見分ける
実際の臨床ですぐに活用できる内容として非常に興味深かったのが、股関節の可動域制限が、筋肉によるものなのか、それとも関節包など関節自体の制限によるものなのかを評価する方法です。
同じように股関節が硬く見えても、原因が違えば治療方法も、改善に必要な期間も変わります。
セミナーでは、大転子の動きや骨盤の代償運動、筋肉の緊張、関節の可動域などを確認しながら、筋肉由来の制限と関節包由来の制限を見分けていく方法についても学びました。
このような細かな評価を行うことで、ただ「股関節が硬い」と判断するのではなく、どこを治療する必要があるのかをより正確に考えることができます。
治療は「痛みを取る」だけで終わらせない
今回のセミナーでは、股関節治療を短期と長期に分けて考える方法も紹介されました。
短期的には、痛みを軽減し、股関節周囲の可動性を改善していくことを目指します。
一方、症状が落ち着いてきた後は、体幹や股関節の安定性、胸郭の動き、呼吸、身体のコントロールなどを改善していくことが重要になります。
ペインアウェイでも、治療によって痛みが軽減しただけで終了するのではなく、なぜその場所に負担がかかったのかを評価し、再発しにくい身体を作っていくことを大切にしています。
セミナーでも、短期的には疼痛コントロールと局所の可動性改善を行い、長期的には体幹・股関節の安定性、胸郭の可動性、呼吸などを改善していくという考え方が示されていました。
手技と物理療法をどう組み合わせるか
治療方法についても、手技だけではなく、High Voltage、Microcurrent(MCR)、Ultrasound、Radiofrequencyなどの物理療法をどのように組み合わせるかについて学びました。
ペインアウェイでもさまざまな治療機器を導入していますが、機械を使用すること自体が目的ではありません。
重要なのは、
「どの患者様に、何を目的として、どの部位に使用するのか」
です。
同じ機器を使用しても、評価が違えば治療する場所や目的も変わります。
今回の研修を通して、手技と物理療法を組み合わせながら、より効率的に痛みや可動域へアプローチしていく考え方が大事だと改めて思いました。
治療だけではなく、ExerciseとSelf-careが重要
そして今回、改めて重要だと感じたのがセルフケアと運動療法です。
治療を受けた直後は身体が楽になっても、
「2〜3日するとまた痛みが戻ってしまう」
という経験をしたことがある方も多いと思います。
特に慢性的な症状では、受け身の治療だけで身体を変えていくことには限界があります。
セミナーでも、治療だけではなく患者様自身が身体を動かし、体幹や臀部など必要な筋肉を正しく使えるようにしていくことを学びました。
さらに興味深かったのは、単に「この運動をしてください」と伝えるだけでは不十分だという考え方です。
患者様自身が、
「なぜこの運動が必要なのか」
「この運動を続けることで何を改善したいのか」
を理解することが、セルフケアを継続するためには非常に重要です。
日本で学び続け、それをバンコクの治療へ
ペインアウェイでは、治療方法を一度覚えて終わりとは考えていません。
身体に関する研究や治療技術は常に進歩しています。そのため、日本をはじめ国内外のセミナーや研修に継続的に参加し、新しい評価方法や治療技術を学び、それをスタッフ教育にも取り入れています。
股関節の痛みがあるから股関節だけを見るのではなく、
腰椎、骨盤、胸郭、呼吸、体幹、臀部、姿勢や身体の使い方まで含めて評価する。
そして、痛みを軽減するだけではなく、患者様が今後どのような状態を目指したいのかを共有し、そのゴールに向けて治療計画を作っていく。ということも大事だと思いました。
今回学んだ評価方法や治療の考え方については、ペインアウェイの治療やスタッフ教育にも少しずつ取り入れ、股関節痛だけでなく、腰痛、膝痛、スポーツ障害、姿勢の問題など、さまざまな症状への治療の質をさらに高めていきたいと思います。
Pain Away Clinicはこれからも、日本の治療技術や新しい知識を積極的に学びながら、バンコクの患者様により質の高い治療を提供できるクリニックを目指していきます。
また、2026年末にナナ、プルンチットエリアにもオープンします。場所はスクンビットソイ2にあるプルンチットセンターです。



