Pain Away Clinicでは、患者様やスポーツ選手により良い治療を提供するため、日本をはじめ海外のセミナーや研修にも参加し、新しい治療技術だけでなく、身体の評価方法やリハビリテーション、運動療法について継続的に学んでいます。
今回のセミナーでは、特にスポーツコンディショニング、身体の動作評価、ケガの予防、そして競技復帰までの考え方について学びました。
今回改めて重要だと感じたのは、
「治療方法を最初に考えるのではなく、まずその選手に何が必要なのかを考える」
ということです。
「筋肉が硬い=ほぐす」とは限らない
患者様やスポーツ選手から「ここが硬い」「身体が硬い」という話をよく聞きます。
その場合、硬い筋肉をマッサージしたり、ストレッチしたりすれば良いと考えがちです。
しかし今回のセミナーでも重要だったのが、「硬い=ほぐす」という考え方が必ずしも正しいわけではないということです。
身体の動きが悪い場合、まず「なぜ動かないのか?」を考える必要があります。
本当に筋肉が短くなっているのか。
関節そのものの動きが悪くなっているのか。
身体を安定させるために、無意識に筋肉を硬くしているのか。
別の関節が動かないために、その部分が代わりに負担しているのか。
あるいは、関節の可動域は十分にあるものの、その範囲をコントロールする筋力が不足しているのか。
原因が違えば、当然治療方法も変わります。
柔軟性を高くすることだけが目的ではありません。
その人や競技に必要な可動性(Mobility)と安定性(Stability)のバランスを作ることが大切です。
Need・Control・Loadという考え方
今回のセミナーで興味深かった考え方の一つが、
Need(必要な動き)
Control(コントロール)
Load(負荷)
という視点です。
まず、そのスポーツを行うためにどのような動きが必要なのか。
次に、その動きを自分の身体で正しくコントロールできているのか。
そして、実際の練習や試合でかかる負荷に身体が耐えられるのか。
この3つを考える必要があります。
例えば、ベッドの上で股関節の可動域を測定したときに十分に動いていたとしても、実際に走る、ジャンプする、着地する、ボールを蹴るといった動作の中で股関節を正しくコントロールできるとは限りません。
また、1回だけであれば正しく動けても、何度も繰り返して疲労してくるとフォームが崩れることもあります。
そのため、柔軟性や筋力を測るだけではなく、実際の動作の中で身体をどのように使っているのかを見ることが重要になります。
スポーツによって身体に求められるものは違う
今回のセミナーでは、サッカー、野球、テニス、バスケットボールなど、競技によって身体に求められる機能が大きく異なることについても学びました。
同じ「膝が痛い」「肩が痛い」「腰が痛い」という症状でも、その人がどのスポーツをしているかによって、身体にかかっている負担や原因は異なります。
そのため、すべてのスポーツ選手を同じように評価して、同じように治療することはできません。
サッカー
サッカーでは単純に走るだけではありません。
加速、減速、方向転換、キック、ジャンプ、着地、そして片脚で身体を支える動作を何度も繰り返します。
さらに、ボールを蹴る脚と身体を支える脚では、それぞれ違った役割があります。
そのため、股関節の可動性や安定性、膝のコントロール、足首の可動域、体幹の安定性などを総合的に考える必要があります。
例えば膝に痛みがある場合でも、必ずしも膝だけに問題があるとは限りません。
足首の動きが悪かったり、股関節をうまくコントロールできていなかったりすると、結果的に膝に大きな負担がかかることがあります。
野球
野球の投球動作も、腕だけで行っているわけではありません。
下半身で生み出した力を、股関節、骨盤、体幹、肩、肘、そして手へと効率よく伝えていく必要があります。
そのため、野球選手に肩や肘の痛みがあるからといって、肩や肘だけを治療すれば良いとは限りません。
股関節の動き、体幹の回旋、肩甲骨の動き、肩関節の可動性や安定性など、身体全体を確認する必要があります。
このように身体全体を連動させながら力を伝えるキネティックチェーン(Kinetic Chain)という考え方も、スポーツ選手を診るうえで非常に重要になります。
テニス
テニスでは、加速、身体の回旋、左右への移動、リーチ動作、オーバーヘッド動作などを何度も繰り返します。
特にサーブでは、肩や腕だけで力を出しているわけではありません。
地面から得た力を脚、股関節、体幹へ伝え、最終的に肩、腕、ラケットへと伝えていきます。
そのため、肩に症状があったとしても、肩だけではなく、胸椎の回旋、股関節の機能、体幹の安定性、下半身の使い方なども評価する必要があります。
バスケットボール
バスケットボールでは、ジャンプ、着地、加速、減速、方向転換を何度も繰り返します。
ここで重要になるのが、単純に「強い力を出せるか」だけではなく、着地したときの力を身体でしっかり受け止められるかということです。
高くジャンプできる筋力があったとしても、着地の際に身体をうまくコントロールできなければ、膝や足首などに大きな負担がかかる可能性があります。
そのためスポーツコンディショニングでは、
力を出す能力(Force Production)
だけではなく、
力を吸収する能力(Force Absorption)
も非常に重要になります。
Ground Reaction Force ― 地面から受ける力
今回のセミナーでは、Ground Reaction Force(床反力)についても学びました。
私たちが歩く、走る、ジャンプする、着地する、方向転換するとき、身体は地面に力を加えています。
同時に地面から身体にも力が返ってきます。
この力を足部、足関節、膝、股関節、骨盤、体幹などを使って適切に受け止め、次の動作につなげる必要があります。
スポーツでは単純に筋力が強ければ良いというわけではありません。
力を受ける → 身体を支える → 力を伝える → 力を出す
という一連の流れを効率よく行う必要があります。
さらに、力を出す方向やタイミングも重要です。
そのため、一つの筋肉の筋力だけを測定しても、実際のスポーツ動作をすべて理解することはできません。
治療の前に評価する
今回のセミナーでも、Pain Away Clinicが大切にしている考え方と共通していたのが、
「治療をする前に、まず評価をする」
ということです。
肩、体幹、股関節、膝、足関節などについて、関節可動域、筋肉の柔軟性、筋力、安定性、動作のコントロールなど、さまざまな評価方法を学びました。
しかし、たくさんの検査をすれば良いというわけではありません。
重要なのは、
「なぜこの検査をするのか?」
「その結果によって治療方法をどう変えるのか?」
を考えることです。
例えば、同じように股関節の動きが悪く見える2人の患者様がいたとしても、一人は関節そのものが硬くなっていて、もう一人は可動域はあるものの筋肉でうまくコントロールできていないかもしれません。
原因が違えば、必要な治療やエクササイズも変わります。
治療後の再評価も大切
治療は、マッサージやマニュアルセラピー、エクササイズを行ったら終わりではありません。
治療前に行った検査や動作を、治療後にもう一度確認することが大切です。
可動域は変わったのか。
痛みは変化したのか。
動きやすくなったのか。
新しく得られた可動域を自分の筋肉でコントロールできるのか。
こうしたことを確認することで、患者様にもセラピストにも、その治療によって何が変わったのかが分かりやすくなります。
Pain Away Clinicでも、
Assessment(評価)
↓
Treatment(治療)
↓
Reassessment(再評価)
という流れを今後さらに大切にしていきたいと考えています。
スポーツ障害は「痛みがなくなったら終わり」ではない
今回のセミナーでは、肩、股関節、膝、下腿、足関節など、スポーツで起こりやすいさまざまな問題についても学びました。
スポーツ選手の場合、痛みを減らすことはもちろん重要です。
しかし、それは治療のゴールではありません。
日常生活では痛くなくなっていても、走ったり、ジャンプしたり、投げたり、蹴ったり、急激に方向転換したときに再び症状が出る場合があります。
つまり、
「痛みがない=競技復帰できる」
とは限りません。
リハビリテーションでは、身体の状態に合わせながら、
Pain Control(痛みのコントロール)
↓
Mobility(可動性)
↓
Stability(安定性)
↓
Strength(筋力)
↓
Movement Control(動作コントロール)
↓
Sports-Specific Exercise(競技特有の運動)
↓
Return to Sport(競技復帰)
というように、少しずつ実際の競技に近づけていくことが大切です。
もちろん、この順番や内容はすべての人が同じではなく、その選手の状態や競技によって変わります。
「痛みがない」ではなく「競技に戻れる」ことを考える
今回のセミナーで改めて大切だと感じたのは、スポーツ選手の治療では、痛い部分だけを見るのではなく、最終的にその人が何をしたいのかまで考えることです。
例えば、膝の痛みがなくなったことだけをゴールにするのではありません。
サッカー選手なら、全力で走る、方向転換する、ボールを蹴る。
バスケットボール選手なら、繰り返しジャンプして安全に着地する。
野球選手なら、高いスピードでボールを投げる。
テニス選手なら、サーブを打つ、身体を回旋させる、素早く方向転換する。
そこまでできて初めて、本当の意味で競技復帰に近づいていきます。
今回学んだことをPain Away Clinicの治療へ
Pain Away Clinicには、首、肩、腰、股関節、膝などの症状で来院される一般の患者様だけでなく、プロ選手、アマチュア選手、趣味でスポーツを楽しんでいる方など、さまざまな患者様が来院されます。
今回学んだ考え方は、プロスポーツ選手だけに必要なものではありません。
一般の患者様にも同じように、
「どこが痛いですか?」
だけで終わるのではなく、
なぜその場所に負担がかかっているのか?
どこの動きが悪いのか?
どこに安定性が足りないのか?
その動きを正しくコントロールできているのか?
負荷をかけたときにどうなるのか?
その人の仕事やスポーツでは、どのような動きが必要なのか?
というところまで考えていくことが重要です。
そのうえで、一人ひとりの状態に合わせて、Physical Therapy、Manual Therapy、Mobility Training、Strength Training、Movement Correction、Exercise、Sports Conditioningなどを組み合わせて治療プランを作っていきます。
Pain Away Clinicでは、これからも日本をはじめ国内外のセミナーや研修に参加し、そこで学んだ知識や技術をスタッフ全員で共有していきます。
私たちが研修を続ける目的は、単純に治療テクニックの数を増やすことではありません。
「この患者様には何が必要なのか?」
「なぜこの治療をするのか?」
「どうすれば患者様がやりたいことやスポーツに戻れるのか?」
そこまで考えられるセラピストを育て、Pain Away Clinic全体の治療の質をさらに高めていきたいと考えています



